人の名前が思い出せない!物を置いた場所を忘れた!などなど、日常的に一瞬、記憶障害的な症状に陥ることは誰もが経験することです。
若い頃に「最近、忘れっぽいのよね~」と笑いながら人に話していたのも、年齢を重ねてからの物忘れは、「もしかして認知症?」と不安になったりしますが、この物忘れ現象の出ない認知症があることをご存知でしょうか。
私の母がこのタイプの認知症だったために、発見が遅れて要介護となってしまったと私は認識しているのですが、その原因はあまり聞きなれない「無症候性脳梗塞」による認知症だったのです。
まさか認知症じゃないよね~と思っていると重大な病気が潜んでいるかもしれません。母の当時の様子をお伝えしながら、認知症の理解を深めてまいりましょう。
最後に自身や家族の物忘れが、単なる「老化」によるものなのか、「認知症」によるものなのか、見分け方のポイントと簡単な自己診断テストも掲載してあります。認知症の早期発見に参考にされてみてください。
目次
認知症とは
先ずは認知症の定義から説明してまいります。
「認知症」を病名と思われている方は意外と多いと思いますが、実は病名ではなく状態を指す言葉です。何らかの病気が原因で物忘れなどの症状が出てくる状態を「認知症」と呼んでいます。
認知症は原因となる病気がある
「認知症」を発症するのは原因となる病気の存在があり、病気が原因で細胞が死んだり、働きが鈍くなったりして、機能に障害が生じて生活にも支障が出てくる状態です。
原因となる病気の約60%が「アルツハイマー型認知症」、次が20%で「脳血管性認知症」、次いで10%が「レビー小体型認知症」で、「三大認知症」と言われています。
母の認知症の原因は脳梗塞です。様子がおかしいので病院で検査をしたところ脳梗塞と診断されました。
認知症は広く知られている「アルツハイマー型認知症」だけではないことを、まずは知っていただきたいのです。
認知症の症状は「物忘れ」とは限らない
認知症の代表は「覚えていない」「忘れてしまった」の記憶障害ですが、それ以外にも様々な現象が出できます。
- 記憶の障害;人の名前が覚えられない、探し物が増えた 同じことを何度も言う
- 理解力・判断力の障害;話の内容が理解できない、掃除が苦手、お金の管理ができない
- 時間や場所の障害;今日の日付がわからない、今いる場所がわからない、道に迷う
- 実行力や意欲の障害;買い物ができない、段取りができない、身なりに構わない
- 人格が変わる;怒りっぽくなる、気遣いが出来なくなる、人のせいにする
- 気持ちが不安定;気分が落ち込みやすい、寂しがりやすい、出不精になる
実は、母の「無症候性脳梗塞」による認知症の症状には記憶障害が出ていなかったのです。ここが大きなポイントになります。
気が付かない「無症候性脳梗塞」の認知症
母が介護状態になったきっかけは脳梗塞でした。入院したとき医師から告げられたのは、過去に小さい脳出血と脳梗塞を起こした痕跡があるということでした。
それから暫らくして、本当に「あ~っ」と納得のため息が出たお告げでした。
まだら認知症!経験が補う
人間の組織は成人になると少しずつ老化が始まるので、筋力が衰えてきたり、お肌にシワやたるみが出てくるのと同じように、脳も徐々に機能が落ちて、その過程でもの覚えが悪くなったり、忘れっぽくなったりしますが、脳はこの老化現象が一番遅い臓器とも言われています。
逆に他の臓器が老化が始まってもなお、成長し続けているのが脳の組織です。
経験により脳細胞が学んで、鍛えれば鍛えるほど脳は活発に活動していく物凄い臓器だったりするので、脳を刺激し続けることで、老化をかなり遅らせることができるようです。
確かに年齢を重ねた人を「生き字引き」などと表現しますが、若者が情報を沢山持っているのに、高齢者は知恵を沢山持っていますし、知恵にまた知恵が積み上げられて行く様子は、とても老化が始まっているようには思えないですね。
若干、インプットやアウトプットの作業が低下してはくるものの、生物に備わている生存本能は年を追うごとに磨きがかかり、生き抜く力が増していくように思えます。
あふれる情報に触れるときよりも、年を重ねた人が発する言葉に感銘を受けるのは、脳が単なる情報を記録するだけの組織ではなく、情報を知恵に変えて人間力を鍛えて次世代に継承していくのが脳本来の役目だからではないでしょうか。
ですから、人の名前を覚えられないとか、物の行方を忘れるとかは、危惧する問題ではなく、インプットやアウトプット以上に脳が果たす役割は、他の臓器が老化するなかで、なおも成長し続けており、単なる処理機能がスピードダウンしただけで、脳本来の機能からしたら一部の老化現象に過ぎないのではと思います。
ところが、私のこの想いが、母の認知症の気付きの妨げになっていたとは思いもよりませんでした。
母は脳梗塞で入院する1年ぐらい前から、片付けや掃除が雑になったのと、料理が単調になってきたなと感じたことを、元々おおらかな性格だったので加齢によるものと気にも留めなかったのです。
逆に些細な事も覚えていたり、孫の扱いがとても上手だったり、認知症など微塵も疑ったことがなかったのです。
しかし、入院して脳梗塞に関して詳しく調べるようになってから、脳梗塞が原因の認知症は「まだら認知症」といって、出来ることと出来ないことがはっきりしているのが特徴で、まさしく母のことではないか!と分かったのです。
そして、小さな脳梗塞は自覚症状もないので、知らないうちに多発していることもあり、ある日突然大きな脳梗塞が起きて、死に至ったり、介護が必要な障害が残ったりするようです。その小さな脳梗塞を「無症候性脳梗塞」といい、この状態から既に認知症が現れる場合があるのです。「あ~っ」とため息がでました。
認知症とは気づかない症状
当時の母の様子を記してみます。
- 掃除が雑になった
- 定期購入していた食材が使いきれなくなった
- テレビドラマのあらすじが上手に説明できなくなった
- 携帯電話の使い方が怪しくなった
- 多趣味だった母が、何もしなくなった
- 父の薬の管理が出来なくなった
一生懸命思い出した内容です。
記憶障害は目立った症状として現れていませんでしたし、上記の内容も老化現象ともとれるような症状ですが、先に述べた認知症の症状に見事に当てはまるのです。
断定も出来ないのですが、「無症候性脳梗塞」の認知症があると知ってからは、たぶん認知症の症状だったんだろうなと思える現象が、言われてみればあれもこれもと思い出されるのです。
母の一言一言が私を和ませてくれて学ばせてくれて、昔から天然なところはありましたが、言葉が出にくいなど思ったこともなく、物事の理解に違和感を感じることもなく、当時の様子から脳梗塞が潜んでいることに全く気づいてあげられませんでした。
脳梗塞は高血圧の人が特になりやすい病気で、確かに母も服薬はしていませんでしたが、血圧は高めでした。
高血圧で、先ほど挙げた認知症の症状が一つでも思い当たる節があったら、無症候性脳梗塞による認知症かもしれません。
「認知症」と「老化の物忘れ」の見分け方
母は場合は、たまたま記憶障害が目立って現れわれなかっただけで、多くの認知症患者の初期症状にみられるのは、やはり物忘れです。
原因は様々ですが、早期発見によって進行を遅らせることが可能になってきましたので、単なる物忘れなのか、認認知症による物忘れなのか、ご自身でも意識することで、介護の予防になればと簡単な見分け方をご紹介いたします。
チャックポイント
長谷川式簡易知能評価スケール
病院などで実際に使われている、「認知症」を判断する簡易テストです。
絶対ではないので、ご理解のうえ行ってみてください。
3つ以上間違ったら、念のため医療機関を受信して、認知症かどうか診てもらうことをお勧めします。
まとめ
元気だった母が認知症になるとは想像したことが無かったので、頭のどこかで「この状態は一時的なもので、やがて良くなるんじゃないの…」と思うことがありました。まして母の場合、最初に脳梗塞を起こした直後は、以前とそんなに変わらないような様子だったからです。
しかし、その様子は脳梗塞を発症する兆候の現れだっとことは理解もしてます。だから、もっと予防ができたかもしれないと悔やむこともしばしばですが、とっても元気で穏やかな母に癒されながら暮らせていますので、皆さんも早めの対応を心掛けてください。
認知症の症状は様々なんだ!ということを知っていただいて、少しでも様子が違うと思ったら診察を受けて欲しいと願います。
とはいえ、老化による物忘れを「認知症」かもと必要以上の不安を抱くと、気持ちに影響が生じかえって積極性にかけることになっりするのはマイナスにもなりますが、とりあえず気になったら、早めに専門家に相談をしてください。