リハビリ病院のメリット

脳梗塞は深刻な後遺症をのこし、時には死に至らしめる重篤な病気です。

発見が早く、速やかに治療が行われることで、後遺症が全く残らない場合もありますが、統計によると介護生活に至る原因の第1位が脳疾患によるものです、脳梗塞は発症した6割の人に介護が必要な後遺症が現れるといわれています。

脳梗塞後の在宅介護は長期に及ぶことが珍しくありません。少しでも障害を軽くし、本人の自立と家族の介護負担の軽減のために、絶対知っておいてほしいのが「回復期リハビリ病院」です。

たとえ障害が軽度であっても、何かしらの機能の低下が見られたら転院を検討していただきたいので、回復期リハビリ病院に転院して得られるメリットを経験談も交えてお伝えいたします。

回復期リハビリ病院とは

正式名称を「回復期リハビリテーション病棟」と言います。(ここでは以降「リハビリ病院」と表記していきます)

脳疾患や関節などの病気、ケガにより損傷を受けると脳や身体の機能に障害がでることがあります。

急性期の治療が終わり、状態が安定すると担当医師からは退院を告げられますが、障害が顕著の場合自宅での生活は困難を極めます。また、自宅に戻ると、入院中のように自分で積極的にリハビリを行うことが出来ず、機能の回復が難しくなります。

しかし、リハビリ病院に転院することで、機能障害が改善し、状態によっては日常生活が支障なく送れる程度までになるのです。

まずは、リハビリ病院がどんな病院なのか説明いたします。

機能の回復に特化した病院

リハビリ病院とは、脳卒中などの脳血管疾患や、大腿骨や骨盤などの骨折、脊髄損傷など、厚生労働省が決めた疾患の患者が、日常生活動作(食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴・起居などの動作)の改善を目的としたリハビリテーションを集中的に行い自宅や社会への復帰を支援する専門病院のことです。

急性期の治療が終わったてから1~2ヶ月後を回復期と言います。この回復期は機能の改善を図るうえで大変重要な時期になります。この時期に集中的にリハビリを行うことで、日常生活動作が向上し自宅での生活がよりスムーズになります。

安定期になると改善スピードが一気に下がり、機能回復にあまり期待できなくなってくると言われています。

この回復期に医師をはじめとする専門のスタッフがチームを組んでリハビリを集中的に行うことを目的とされるのが、リハビリ病院の役割です。

1日最大3時間のリハビリを365日毎日行っており、それ以外の時間も、入院中の生活全てがリハビリととらえ、起床・着替え・排泄・食事・歯磨き・入浴などの日常生活動作の向上に向けた取り組みが成されています。

疾患と入院期間に制限がある

リハビリ病院は、発症まもない患者に対してリハビリを目的に創設された病院です。厚生労働省が定める規則によって利用できる疾患と利用できる時期が決められており、誰でも入院出来る病院ではありません。

 

◎厚生労働省が定める回復期リハビリテーション病棟入院基準

 対象疾患 発症からの期間  入院期間 
脳血管疾患、脊髄損傷、頭部外傷、くも膜下出血のシャント術後、脳腫瘍、脳炎、急性脳症、脊髄炎、多発性神経炎、多発性硬化症、腕神経叢損傷等の発症後もしくは手術後、又は義肢装着訓練を要する状態 2ヶ月以内 150日
高次脳機能障害を伴った重症脳血管障害、重度の頚髄損傷および頭部外傷を含む多部位外傷 180日
多肢の骨折、大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の骨折 2ヶ月以内 90日
外科手術又は肺炎などの治療時の安静により廃用症候群を有しており、手術後又は発症後 2ヶ月以内 90日
大腿骨、骨盤、脊椎、股関節又は膝関節の神経、筋又は靭帯損傷後 1ヶ月以内 60日
股関節又は膝関節の置換術後の状態
1ヶ月以内 90日

まずは、入院先のソーシャルワーカーか担当医、もしくはお近くのリハビリ病院に訪ねてみるとよいでしょう。

リハビリ病院へ転院する5つのメリット

療法士によるリハビリが毎日行われる

理学療法士による理学療法、作業療法士による作業療法、言語聴覚士による言語療法が1日最大3時間の範囲内で365日毎日行われています。

理学療法は、基本的な運動能力の回復を目的としたリハビリを、作業療法は生活動作の自立に向けた訓練を、そして言語療法はコミュニケーション能力や摂食機能の回復と維持、記憶力などの脳の機能のリハビリを行います。

母の話になりますが、転院直後は寝たきりの状態でしたが、約4ヶ月余のリハビリで自力で歩けるようになったのです。トイレも自分で行けるようになり、退院後の自宅での生活に支障がないくらいに機能が回復したのです。

会話も難しい状態でしたが、次第に言葉数が増えていき、蚊の鳴くようなかすれたような声もはっきりと聞き取れるようになり、コミュニケーションも問題なく出来るようになりました。

総力戦で母の回復に励んでいただいてくれている印象で、スタッフ全員が母の自立を後押ししてくれいてる様子と、経過と共に明るい兆しが見えていくのは、本当に勇気づけられました。

リハビリの様子が見学できる

急性期の病院との違いの一つに、面会時間があります。リハビリ病院の面会時間は朝から夜まで可能となっています。(面会時間は病院ごとに変わりますので、直接ご確認ください)

病院によっては事前に予約すると一緒に食事をすることもできます。家族と触れ合いコミュニケーションをとることもリハビリと考えられており、面会の時間設定が長く設けられているようです。

リハビリの見学が自由で、様子を伺うことも出来ますし、お願いすると介助の仕方や自宅でのリハビリ指導を受けることもできます。自宅に戻ってからの介護に大いに役立つ知識を得ることが出来て、大変勉強になります。

リハビリ以外の時間も、スタッフの声のかけ方や、移動の仕方など、一つ一つが為になることだらけで、他の患者さんのとのやり取りもとても参考になります。

ソーシャルワーカーの退院支援

退院後は自宅に戻るのか、施設に入所するのかによって、必要な手続きが変わってきますが、初めての時は何から始めたらよいのか戸惑うことも多いです。

リハビリ病院にはソーシャルワーカーが常駐しており、退院後の方向性を一緒に考えてくれます。

本人の意向と、家族の状況を踏まえ、最適な手段を提案してくれて、介護サービスやケアマネジャーとの連携、各施設との連絡調整を行ってくれるのです。

各種手続きも、詳細に案内をしてもらえるので大変心強いです。

家屋調査で家庭内の環境づくり

退院後に自宅に戻る場合は、家の室内環境にも悩むところです。リフォームが必要なのか現状のままで間に合うのか、素人では判断が付きかねます。

そんな心配も、入院中に作業療法士が自宅まで、家屋調査にきてくれます。実際に家の中の動線を確認し、改修工事が必要か福祉用具のレンタルで間に合うのかなど、本人の状態を考慮された適切なアドバイスを聞くことができます

作業療法士の細かな動作確認が行われ、後に報告書として文書で詳細を知らせてもらえるので、退院に向けての準備が大変スムーズなものになります。

食事指導が受けられる

脳梗塞を起こすと、嚥下機能の低下が現れることがあります。咀嚼に問題が生じて誤嚥を招く心配が出てきます。

自宅での介護となると食事にも気を配らなくてはなりませんから、形状や内容も本人の状態に合った食事を用意するとなると、大いに頭を痛めるところです。

それにも、専門のスタッフがちゃんと対応をしてくれます。

栄養士と言語聴覚士による食事指導は、嚥下機能障害の人が食べ安い物や、逆に食べずらいもの好ましくないものを、一覧にして分かりやすく解説してくれます。

また、食事の形状やむせたりしないような工夫、例えばテーブルの高さや、食べる姿勢、食器から準備の仕方から食事に関することは多方面において細かくアドバイスを受けることができます。

食器の選び方や、手間をかけない調理の仕方はさすがにプロ!と感動しました。

まとめ

リハビリ病院はある程度重度の障害の人が入院して、リハビリを行うイメージを持たれている人もいると思います。

重度の後遺症がなくても、実際に自宅での生活が始まると、想定外の問題が発生するのですが、リハビリ病院は様々な状況に備えた対策や指導をしてくれる病院なんです。

一見分かりずらい障害が潜んでおり、徐々に日常生活動作に弊害をもたらしていくのです。

実は、私の母が症状の軽い脳梗塞を発症したときに、転院せずに自宅退院をしたのですが、次第に日常動作に困るような現象が出はじめた経験をしております。

ですから、軽症で済んだ脳梗塞でもリハビリ病院への転院を是非お勧めしたいのです。

入院中にお見舞いに行くとデイルームで他の患者さんと一緒に食事をする様子を見させてもうらうことがありましたが、患者さんの中には、前回母が脳梗塞を起こした時のように軽症でもリハビリを行うために入院している方がいました。

今に思えばたとえ軽症でもリハビリ病院に転院していれば、もっと積極的に日常生活が送れるようになったのではないかと考えることがあります。