介護の目標設定

介護サービスを利用する時は、必ずケアマネジャーにケアプランに作成していただく為の打ち合わせを行います。その際に、今の現状や今後どんなサービスを利用したいかを事前に本人と確認しておく必要があります。

ケアプランが出来ると、各関係機関との担当者会議が行われ、介護サービスの利用が開始されるのですが、この担当者会議で必ず聞かれるのが、目標設定です。

この目標設定が意外に介護者と本人との思いの違いに気付かずに進めてしまうことがあるので、そんなエピソードをお伝えしたいと思います。

介護サービスを利用する前には目標設定をする

介護保険制度の基本的な考え方として「単に介護を要する高齢者の身の回りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする」とあります。

目的は本人の自立ですから、自立に向けた具体的な目標設定が必要になります。

各施設の担当者会議

デイサービスやデイケア、訪問看護など、サービスを利用する前に行われるのが「担当者会議」です。会議と言っても打合せと理解してください。サービスを利用することで、どうなりたいかを明確にして、サービス提供者、利用者、介護者が共有化し、本人の自立に向けて三者が協力していきましょう!という話し合いがされます。

各施設は担当者会議で設けられた目標設定を基に自立向にけた支援の方向性を決めていきます。

担当者会議の前に、ケアマネジャーさんから各担当者に粗方事前情報が通達されていますので、会議はスムーズに短時間で終了となるケースが殆どです。

まれに、担当者や施設のスキルによっては、質問項目が多岐にわたったり、現状が伝わりにくかったりすることもありますので、その点は前もって承知しておいたほうが、良いかなとは私個人の意見です。

事前に本人とどこを目指すか確認

担当者会議の前に本人と「何がしたいか?何が出来るようになりたいか?」を話し合えたら理想的なのですが、脳梗塞の後遺症で判断力の低下が著しいと目標設定が難しいのが現状です。

ですから、介護者である私たちの目標だけでも決めておきましょう!料理が出来るようになる、趣味を再開する、洗濯物をたたむ、など、以前出来たもので現状難しくなってきているものを挙げるのがよいかと思います。

実際担当者会義の時は、担当者が本人を上手にリードし、それらしい目標設定が立てられますので、深刻に考えることはないので安心してください

家族の意向と本人の意向が一致しない場合がある

介護サービスを受けるには、必ず目標設定を文書化する作業があるのですが、実はここの部分は本音と建前の世界になるかと思います。

大きい声では言えませんが、目標設定が現実化するかしないかは、本人にはあまり関係がないということであり、また、書面に記された目標設定が必ずしも本人の意向ではないところで設けられることがあるということです。

理想とする目標をひとまず掲げる

実現が難しそうな目標設定は「絵に描いた餅」になってしまいますし、本人の自覚が曖昧だと、昨日は〇〇が出来るようになりたいと言っていたが、今日は△△が出来るるようになりたいと、毎日目標が変わったりもします。

認知症になると状況を判断して計画を立てるのが難しくなりますので、意外と具体的な目標に意味がなさないのではないかと考えてしまうことがあります。

しかし、本人に意識させることがとっても重要だと考えております。

今後の目標を立てることが自立に向けての第一歩というか、実現化が難しくても、毎日目標が変わっても、「自立に向けて頑張ろうね!」と一緒に考え、常に意識することが、本人の自立を促す最大の力になると思います。

ですから、出来る出来ないにかかわらず、理想の目標を掲げて、毎日本人と語り合っていただきたいです。

介護される人と介護者との温度差に注意

更に、介護者が知っておかなければならないのは、私たちが目指すとこと、本人が目指すとこではかなり温度差があるということです。

実は、以前私は両親に、「何がしたい?」「また〇〇が出来るようになれたらいいね!」「今の状態では困るでしょう!」などと声をかけていました。しかし、両親たちは冴えない反応です。満を持して聞きました「もしかして今困っていることって無いんじゃない?」2人そろっての答えは「何にも困ってないよ!」だったのです。

本人たちの本音の部分というところです。

介護生活が長くなると、双方が現状に慣れてきてしまい、介護される方に困りごとが無くなってきてしまうということです。両親がまさしくこの状態に陥ってしまい、現状に甘んじている二人の様子に私一人がやきもきしていた時期がありました。

確かに以前のように出来たらいいなとは思いながら、自分の体力や意欲がそこまで望んでないことがあるようです。「頑張ろう!」と励ましてるつもりでも、本人は他人ごととして「はい、はい」と聞き流してることがあるということです。

逆に初期の認知症は「自分はまだまだ大丈夫」をアピールする傾向がありますが、実際は全然大丈夫じゃなかったりします。言ってることとをそのまま受け取り本人の意思を尊重したいと思っていたことが、実は本人の意思とは違っていることも珍しくないです。

本当に本人たちは現状に対して困っていることが無いのです。だから、本音は、頑張ってリハビリをする必要性を感じていないのです。ただ、するように言われたからリハビリ頑張るか~~~なのです。

それが現実なのです。

介護は先が長いので諦めることも肝心

育児と違って介護は先が読めないので、計画通りにことは進まず、徐々に認知症が進んでいく中で、イライラがつのっていくこともあると思います。

本人の生きがいや、自分らしさとは無縁に、自分のことが自分で出来なくなることが増えていき、私たちの介護者の時間が介護をする時間として割かれるようになっていくのです。

高齢になると、自分の出来る範囲の限界も認識し始め、思いのギャップに悩む高齢者も少なくはないです。特に男性は家族を支え守ってきた自負がありますのでなおさらです。

そんな状況で、ケアマネジャーさんや施設の担当者さんの励ましは、どこか上の空というか、「言うのは簡単だけど、そうは上手く事は運ばないんだよ」という思いで聞いていることがあるということを知っていただきたいのです。

なので、現状維持でいいか!ぐらいの気持ちで、回復への思いを諦めて介護にあたることが必要な時も現実としてありだなと思っています。

まとめ

国の施策として、国民一人ひとりの尊厳を守り、生涯自立した生活を送れる環境を国が整備するという前提で介護保険制度がスタートしました。ですから、当然担当者はそれに沿った計画をたてて、実行に移してくれています。

しかし、自宅で介護をする人の立場は違うと感じています。

身の回りの世話をしてもらって困る高齢者はいないのです。以前のように動けたら…と願望はあっても、今の生活に困っているかというと全く困っていないのです。

父と、このテーマでよく話をしますが、日々問題なく過ごせるかが最大の関心ごとになっているのです。

本当の目標は介護者の精神的・経済的な問題やストレスがいかに軽減されるかではないでしょうか? そしてそれこそが本当の問題なのではないかと、日々の介護生活の中で感じてしまう今日この頃です。

幸いまだ、私自身に問題が生じてないので、まだまだ介護生活は楽に過ごせそうです。