認知症の種類

認知症かもしれない…と疑う最初のスタートは物忘れの現象ではないでしょうか?

しまい場所を忘れた! 名前が出てこない! などの様子に「認知症の始まりかしら?」と一度は考えたことがあると思います。

母が脳梗塞で入院する以前に、「忘れ物が多くなったね~認知症の始まりなの?」と心配することが日常的にありましたが、認知症の理解が乏しかったために、もう少し様子を見ようと過ごしてしまったのです。

しかし、既に認知症はスタートしており、それも「脳血管性認知症」が現れていたのです。

広く知られている認知症は「アルツハイマー」を原因とする認知症で、違いを知らなかったために、対応が遅れて症状を重くしてしまったのではないかと反省することがあります。

その経験から、認知症には種類がある話と、違いをお伝えすることで、皆さんには早めの対策を取っていただけることを切望いたします。

認知症とは

今は「認知症」と言いますが、以前は「痴呆症」と表現していました。痴呆症は差別用語との指摘があがり、厚生労働省の指導で「認知症」が一般的に使われるようになりました。

知っているようで知らない認知症の説明からしてまいります。

認知症は病気ではない

私は母が認知症になるまで「認知症」を病名だと思っていました。

認知症を病名だと思っている方が他にもいらっしゃるのではないか…と無理やり仲間を探す感じですが

「認知症」とは状態を表す名称なのです。

どんな状態でしょうか?

脳の細胞が様々な原因により死滅して機能しなくなったり、働きが鈍くなったりして何らかの障害が発生し、日常生活を送るうえで困難が生じる状態です。

認知症の症状

具体的に症状を見ていきましょう。

  • 記憶障害:認知症の最初に出る症状です。忘れている自覚がないのが加齢による物忘れとの違いです
  • 見当識障害:認知症が進行するに連れて、時間・場所・人の順に分からなくなる症状です。記憶障害の次に現れます。
  • 理解力・判断力の障害:物事の理解に時間がかかります。いつもと違うことへの対応が難しくなってきます。
  • 実行機能障害:計画したり、優先順位をつけて行動することが出来なくなります。今まで使えていた電化製品などが使えなくなります。
  • 失語:言葉を司る脳の機能に損傷が出て、言葉が出にくくなったり、理解が出来なくなります。
  • 失認:見たものや耳に聞こえたものを正しく判断することが難しくなります。
  • 失行:身体に麻痺がないのに、着替えがや歯磨きなど、今まで当たり前に出来ていたことが出来なくなります。
  • 行動症状:徘徊や暴言、不衛生になります。
  • 心理症状:幻覚や妄想、不眠障害が現れます。

認知症の最初の症状は記憶障害です。最初のころは、症状が出たり出なかったりで、単なる物忘れと区別がつきにくいのですが、一番簡単な見分け方は、忘れたことの自覚があるかどうかが、参考になるといわれています。

認知症が進んでいくと、物忘れに加えて理解する力や判断する力、集中力が低下し、日常生活に支障が出てきます。

更に精神面にも影響が出てきます。怒りっぽくなったり、意欲がわかなかったり、趣味嗜好が変わったり、人との関わりを避けるようになったりします。

認知症の主な原因

認知症は、様々な原因により脳細胞に問題が生じて現れる状態と前述しましたが、主な原因は以下の4つの種類が挙げられます。

  •  アルツハイマー型認知症(67.6%)
  •  脳血管性認知症(19.5%)
  •  レビー小体型認知症(4.3%)
  •  前頭側頭葉型認知症(1.0%
  •  その他

(参考資料:厚生労働省「認知症の基礎~正しい理解のために~」)

数字から見ても分かるように私たちが広く認識している認知症は「アルツハイマー型認知症」です。

しかし、約3割の人は他の疾患が原因となる認知症です。今回のテーマは脳血管性認知症と一般的に認識されているアルツハイマー型認知症との違いについて触れたいと思います。

なぜ、この2つに限定して違いをお伝えしたいのかと申しますと、脳血管性認知症は生命を脅かす危険性があるからです。そしてその数が、決して少なくないということを危惧しているからです。

ですから、多くの人に違いを理解していただくことで、早めの対策につなげていただきたいのです。

一般的に認識されている「アルツハイマー型」

認知症を頭で思い描くときに、多くの人がイメージしているのはアルツハイマー型認知症のことです。まずは、アルツハイマー型認知症から詳しくみていきましょう。

原因は特殊なたんぱく質?

アルツハイマー病のはっきりした原因はまだわかっておらず、断定には至っていませんが、脳にアミロイドβやタウというたんぱく質が溜まり正常な神経細胞が壊れ、徐々に脳の萎縮が進んでいくのが原因とされるのが有力な説となっているようです。

遺伝子の関与も研究で明らかになってきているようですし、危険因子として糖尿病や高血圧も指摘されています。

 

症状と経過は同じような傾向でゆっくり悪化する

アルツハイマー型認知症は殆どが似たような傾向で症状がゆっくり進行していき、徐々に悪化していきます。今後の状態の予測がし易いかもしれませんので、それに向けての準備を計画的に進めることは出来そうです。

症状は段階的に進行していきます。

  • 初期:最近の出来事の記憶障害や、日付や時間が分からなくなる見当識障害、複雑な作業が難しくなる実行機能障。
  • 中期:数年から数十年前の記憶障害や場所が分からなくなる見当障害、着替えが難しくなる失行や物が認識できなくなる失認が見られるようになります。この頃から行動症状や心理症状が現れてきます。
  • 後期:記憶障害が進み家族やスタッフが分からなり、会話も難しくなってきます。更に進むと寝たきりの状態になります。

進行を遅らせることができる

多くが60歳以降で発症してから、個人差がありますがゆっくりと進行し、2年から3年周期で症状が進み、発症から10年以上たつと、ほぼ寝たきり状態になりますが、様態が急変し、死に至るような心配はないようです。

現在、薬を含めた治療法が見つかっておらず完全に治すことは出来ないと言われています。

しかし、早期発見と適切な治療で遅らせることは可能となってきています。

それによって、症状が進行せず、長い間初期症状の状態で日常生活に支障をきたすことなく過ごされている人もいらっしゃいます。

対策はなんなのでしょうか?

認知症の症状について知ることと、様子の変化に気づくことです。特にアルツハイマー型認知症は他の認知症に比べると、物忘れが頻繁に現れると言われています。

何となく無気力になったように見えるのも、アルツハイマー型の初期の段階の特徴としてあるようなので、出掛けるのが億劫になったり、人付き合いが苦手になったりのなど、少しでも様子に変化があったら、直ちに専門外来の受診をしましょう。

 

※認知症の研究が盛んに行われており、日本で治療薬が開発せれたニュースが流れました。(この記事は2018年に書いたもんです)

薬で治せる時代が遠くないことを願います。

「脳血管性認知症」は再発で一気に悪化する

アルツハイマー型認知症とは全く異なる経過をたどります。見過ごすと大変深刻な状態に陥りますので、小さな変化を「もしや?」と疑ってください。

主な原因は脳卒中

脳血管性認知症の主な原因は、脳の血管が詰まる脳梗塞や、脳の血管が破裂して出血する脳出血などの脳卒中です。

脳卒中により、脳細胞がダメージを受けると周辺の細胞の働きが悪くなり、脳の機能障害や身体の機能障害が現れます。

アルツハイマー型認知症のように、ほぼ全員が同じような傾向で症状が出るのではなく、脳卒中の程度や損傷を受ける部位がそれぞれ違うので、出てくる認知症の症状も違ってきます

人によっては、記憶障害だけが出る人、あるいは逆に記憶障害は出ない人など症状の出方は様々です。

全員に、先に挙げた認知症の症状が現れるわけではないのが、脳血管性認知症の特徴になります。

症状はまだら、再発で一気に悪化する

脳血管性認知症はダメージを受ける部位や障害の程度によって現れる症状が変わってきます。

記憶障害に問題が無くても、判断力が落ちてきたとか、昨日は何の問題もなかったのに、今日は理解力が乏しかったり、できる事とできない事がはっきりしている状態は、脳卒中後に現れる認知症の特徴で、「まだら認知症」といい、アルツハイマー型認知症との大きな違いです

実は、介護が必要となる状態として、イメージされやすいのはアルツハイマー型認知症ですが、介護に至る要因の1位は脳疾患です。脳の細胞が急激にダメージを受けるので、脳の機能障害や身体の障害が病気と共に発症しやすく、日常生活に支障をきたす例が多いからです。

そして、私が最も注目しているのは「無症候性脳梗塞」による認知症です。

脳梗塞を疑うような、手足のしびれ・ろれつが回らない・めまいなどの様子が明らかに見受けられず、日常生活にもなんら問題がない状態でも、まだら認知症らしき症状が現れている場合、そこには、やがて起こる深刻な事態が既に潜んでいることがあります。

症状がなんとなく…的なので意識されることが少なく、症状の出方も日によってバラバラで、記憶がしっかりしていたり、行動には異常が無かったりの様子では、判断力が多少鈍ったり、日付が分からなくなったりしても、なかなか脳梗塞を疑うまでに及ばないのが実情です。

「最近老化現象が出て来たね~」と感じていた症状が、実は脳梗塞が原因による現象で、まさしく、なんとなく様子がおかしい状態が無症候性脳梗塞による認知症と呼ばれているものなのです。

気が付かないうちに、小さな脳梗塞を多発していると、やがて命にも関わるような脳梗塞につながります。一命を取り留めても、日常生活に支障をきたすような後遺症が残ったり、再発するたびに認知症が一気に悪化するよな経過をたどっていきます。

脳梗塞による自覚症状がなくても、まだら認知症が症状として出ることがある!ということを是非知っていてださい。

発症させないための予防がカギ

脳梗塞の原因が明確になっている昨今は、予防することが十分に可能となってきました。

老化現象なのか、無症候性脳梗塞による認知症なのか判断の材料として有力なのは高血圧症です。

高血圧症は動脈硬化を引き起こす最たる危険因子で、脳梗塞はこの動脈硬化が進行して引き起こされる病気です

高血圧症をお持ちの人は、特に小さな変化でも見逃さないよに意識してほしいのと、なんとなく最近老化現象が出て来たんじゃない?と気になったら、真っ先に診察を受けて、脳に異常がないかを検査してもらってください。

早期に発見できれば、予防のための対策が取れるので、深刻な事態を避けることが十分可能となります。

母のことで悔やむのが、この知識がなかったからです。

母は高血圧症でした。今にして思い返せば兆候はあったのですが、受診までには至らなかったので、後遺症が残る脳梗塞を発症してしまいました。

発症直後のMRI検査で、小さな脳梗塞や脳出血の跡が数か所あると、医師から告げられたのでした。

物忘れに加え、料理のメニューが単調になったことや、掃除が雑になったことを加齢の影響かとやり過ごしていたことが、実は脳梗塞が原因だったかもしれなかったのです。

併せて、高血圧症を初めてとする糖尿病や脂質異常症は、脳卒中のリスクが非常に高まりますので、生活習慣病の治療はしっかりと行いたいです。強くお願いいたします。

まとめ

今回はアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の違いに焦点を合わせて説明いたしました。

一般に認識されている「認知症」はアルツハイマー型認知症の症状であることがお分かりいただけましたでしょうか?

母は脳梗塞が原因の脳血管性認知症です。以前私が認識していた認知症と明らかに症状が違っています。脳梗塞が再発すると症状が一気に進みますが、その間は認知症状は一定の状態を維持しています。

認知症は早期発見・早期治療で症状の進行を遅らせることが可能です。

初期症状では「認知症」なのか「物忘れ」なのか判断が難しい所です。ましてや「アルツハイマー型」か「脳血管性」なのかは検査をしないと正しい診断が出来ないのです。

認知症の原因は様々で、対処の仕方も違いますが、おかしいと思ったらまずは受診をして下さい。介護が少しでも楽になりますように。