脳梗塞になったらやるべきこと

平成29年版高齢社会白書によりますと、65歳以上で介護が必要になった主な原因の第1位は脳血管性疾患でした。脳血管性疾患とは、脳出血や脳梗塞などの脳卒中です。

脳梗塞は血管が詰まることで起きる病気で、手・足の障害や、言葉の障害、脳の機能障害など後遺症をもたらします。

脳梗塞は程度の差はあれ、約6割の人が何らかの介護が必要になるといわれており、家族にとっても負担の大きい病気です。

しかし、突然発症することがほとんどなので、家族としてはこれからどうすればよいのか戸惑うことばかりです。

母が脳梗塞を発症し介護生活に突入した経験から、脳梗塞を起こしたときに、その後の介護にも影響を及ぼすので、見落として欲しくない!知っていて欲しい!そんな心得を5つまとめてみました。

脳梗塞の心得5つ

脳梗塞による介護生活は長引くことが多いようです。精神的にも身体的にも経済的にも負担がのしかかってきます。

今回ご紹介する話は、私の経験から独断でまとめた5つの心得で、機能障害の改善や進行を防ぐことで、介護の負担を全体的に緩和させることが期待できる話と、長期化する介護にのしかかる費用の、負担軽減につながる話です。

入院直後から声掛けとスキンシップで機能回復につなげる

脳梗塞は治療を開始してすぐにリハビリがスタートします。リハビリの開始が早ければ早いほど、機能回復のスピードが上がり、改善が期待できると言われています。

リハビリは専門スタッフが身体の状態に合わせて進めていきますが、専門のスタッフが行うリハビリ以外でも、家族が出来るリハビリがあります。

脳梗塞の治療は、血液の塊を溶かす、脳のむくみを回避する、血栓を作らせないなどの薬剤を投与する内科的な治療が主です。入院直後からほとんどの場合で面会が可能です。

この面会時に、積極的に話しかけることが、家族の出来るリハビリになるのです。

脳梗塞はコミュニケーションに支障をきたすことが少なくありませんが、言葉を上手く使えなくなる「失語症」によることが多く、言葉の回復に声掛けは有効な手段の一つだからです。

元気な頃は、会話に意識を向けたことが無かったと思います。もしかすると、会話も必要以上に交わさなかったかもしれません。しかし、脳梗塞後は、積極的にこれまでの会話の量をはるかに凌ぐ勢いで話しかけていただきたいのです。

例え、こちらの声掛けに返事が返ってこなくても、話しの内容を理解をしようとしたり、答えようとする本人の意識が働くことによって、言葉を司る脳が刺激を受けて、言語回復に効果を発揮していくそうです。

更にこの意識は、言葉の回復だけでなく他の機能の回復にも役に立つといわれています。本人の負担のない限り沢山話しかけてあげたいです。

それから、「手を握る」「体を摩る」の行為は回復ホルモン分泌され、機能の回復につながるようです。スキンシップで安心感を与えることができるので、本人の不安を和らげることもできます。

コミュニケーションに支障があると、家族のストレスにもなり介護の負担感が増していますが、声掛けが有効な手段になるなら、取り組まない理由がないのではないでしょうか。

回復期リハビリテーション病棟へ転院する

脳梗塞を発症しても、発見が早く、速やかに治療が行われることで、後遺症が全く残らない場合があります。

このように、身体や脳の機能状態に問題がなければ必要がないのですが、何かしらの機能の低下が見られたら、たとえ障害が軽度であっても「回復期リハビリテーション病棟」への転院を考えましょう。

「回復期リハビリテーション病棟(以下リハビリ病院)」とは、脳卒中などの脳血管疾患や、大腿骨や骨盤などの骨折、脊髄損傷など、定められた疾患の患者に、日常生活動作(食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴・起居などの動作)の改善を目的としたリハビリテーションを集中的に行い、自宅や社会への復帰を支援する専門病院のことです。

入院生活の全てがリハビリになっており、母が転院した当時は立つことも出来なかったのですが、約5ヶ月近い入院で、自力歩行が可能になり自宅で過ごすには問題がない状態にまで回復しました。

転院による不安や疑問は入院先のソーシャルワーカーに相談するのが一番ですが、いない場合は、担当医かお近くのリハビリ病院に問い合わせてみるとよいでしょう。

リハビリ病院でしっかり「リハビリ」を行うことで、在宅で介護をする家族の負担がかなり軽減されます。これは断言できます。

経済的負担の軽減のために「世帯分離」を知っておく

脳梗塞は状態にもよりますが、症状によっては長期の入院が必要になります。

長期入院となれば、医療費がかかり、経済的な負担が生じてきます。その医療費を軽減する方法の一つに「世帯分離」という方法があります

「世帯分離」とは、同居する家族の世帯を分けて住民登録をすることですが、医療費負担等の限度額の算定は世帯の総収入をベースに行っているので、親世代と子世代を切り離すことで、患者本人の算定基準の総年収額を低くすることが出来るのです。

それによって、親世代が住民税非課税世帯に該当になるケースが出てくるのですが、住民税非課税世帯には1ヶ月に掛かる医療費の限度額が抑えられる措置が取られているのです(高額療養費制度・自己負担限度額

この制度は介護保険の限度額にも反映されるのですが、ただし、気を付けなければならないのは、本人の収入が多いと該当にならないばかりか、逆に支払う健康保険料の総額が多くなるので、かえって出費が増えることがあります。

本人(夫婦)と子世代との収入を照らし合わせてから、世帯分離の手続きを行ってください。

親世代が住民税非課税世帯でしたら限度額申請を行いましょう。市区町村の担当窓口で手続きをすれば「健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証」が発行されます。病院に提示することで月の支払い額が軽減されます。

申請した月の1日に遡って適用になります。もし申請が間に合わず入院日から月をまたいでしまっても、後から償還払いで払いすぎた分は戻ってきます。

有能で好相性のケアマネジャーをみつける

冒頭でもお伝えしましたが、脳梗塞を含む脳卒中は、介護が必要になる原因疾患の第1位となっています。身体の機能障害や認知症など、脳梗塞の後遺症は介護が余儀なくされるケースが多く家族の大きな負担になっていきます。

家族の負担軽減や本人の自立を促すために介護保険サービスは是非利用したい制度です。

介護保険サービスを利用するには、介護認定を受けなければなりませんが、同時にケアマネジャーも探さなければなりません。

ケアマネジャーとは、介護の専門職で介護に関するコーディネートやマネジメントを行う公的資格です。介護保険サービスを利用するときに必要になる「ケアプラン(サービスを有効に利用するための計画)」の作成をしてくれます。

自分たちの条件に合ったケアプランや事業所の選択など、介護サービスを有効に活用するためには、専門的な知識と豊富な情報を備えているケアマネジャーとの良好な信頼関係の構築が必要になってきます。

ケアマネジャーのスキルには個人差があります。有能で相性の良いケアマネジャーに巡り合うためには、早めに情報収集をして、ケアマネジャー探しを始めるのがよいでしょう。

一番は知人のクチコミですが、いない場合は、市区町村の介護保険担当窓口か地域包括支援センターへ問い合わせてみてください。

身体障害者手帳を申請する

経済的負担の軽減にもう一つお伝えしたいのが、身体障害者手帳の申請です。

申請で1級~3級(重度障害)と認定された時の最大のメリットは、「重度心身障害者医療費受給資格証」が発行され、医療費の自己負担分を市区町村が負担してくれることです。つまり医療費が掛からなくなるのです。脳梗塞の治療に限らず、他の診療科も、他の病院も、歯科も健康保険での支払い全てが適用になります。

更に税金の減免や所得控除、公共料金の割引、交通運賃の割引などのサービスが受けられます。

脳梗塞の場合、障害種別は「肢体不自由」での申請が主ですが、発症から6か月が経過した時点での申請になります。認定基準が都道府県よって違うことがありますので、交付対象になるかどうかお住いの市区町村窓口でお尋ねください。

まとめ

脳梗塞になると突然重大な病気になってしまったと慌ててしまいます。

脳梗塞は重い後遺症が残ったりしますので、家族の負担も長期にわたる場合が少なくありません。介護者の精神的負担や経済的な負担が少しでも軽減につながるような手段をまとめてみました。

発症直後は、「後遺症の機能障害をいかにして改善させていくか」に集中し、対策を講じていただきたのと、落ち着いてきたら、今後の生活や費用の対策を考えてみて下さい。

そのための参考になればと思い独自の視点から対応策をお話しました。

最後に、脳梗塞にならないために、普段の生活習慣に気を配ることが最も重要で、特に高血圧症の人は脳梗塞になるリスクがとても高いので注意が必要です。

それでも、脳梗塞になってしまったら、できるかぎり負担が軽くなるような体制を整えるために、多くの協力がないと乗り切れませんので、遠慮せずに周りを巻き込む覚悟も持っていただけたらと思います。

少しでも介護が楽になりますように。