脳梗塞と生活習慣病

脳梗塞は脳の血管が詰まり、酸素や栄養が届かなくなったことで、周辺の脳組織が機能しなくなってしまう病気です。

女性よりも男性が罹る割合が多く、医学の進歩で亡くなる人は減ってきましたが、まだまだ日本人の国民病といえる病気です。

脳梗塞が深刻なのは、約2割の人が死に至り、約6割の人が介護を必要とする何らかの後遺症が残るからです。

今回は、脳梗塞の首謀者である高血圧と共犯者を割り出し、監視の仕方についてお話します。

首謀者の高血圧とは

そもそも血圧って何?

人間が生命を維持するために、心臓がポンプとなり、血液を全身に送り届ける作業を日夜行っています。

見えないところで行われているため、実際何が起きているのか自分では確認することが出来ないので、監視の目が甘くなりがちです。

血圧とは、心臓が血液を送り出す時に血管にかかる圧力のことで、心臓が収縮して血液を勢いよく押し流す時にかかる圧力を最高血圧、逆に心臓が拡張したときにかかっている圧力を最低血圧と言います。

高血圧と言われるのは、最高血圧の値が標準の数値を超えている状態のことです。

高血圧は何が問題なのか?

血液は非常に優秀で、常に血液中の成分のバランスを一定に保とうとする動きを自ら行っています。何らかの成分が増えて、バンランスが乱れると、水分を蓄えて濃度を薄めようという動きに出ます。

すると、血液の量が増えて、血管内が窮屈になってくると、血液の流れが悪くなってきます。それでも心臓は頑張ってフル稼働させて、いっぱいになった血液をいつも通りに送り届けようとするので、当然血管内の圧力が上がっていきます。

特に血液が重点を置いて見張っている物資の一つがナトリウムです。すなわち塩分です。

塩分を摂りすぎると高血圧になると言われる所以です。

常に高い負荷が血管にのしかかるようになると、血管が疲弊していきます。疲弊すると更に血圧が上がっていく負のスパイラスに突入していくのです。

血管が丈夫でしなやかで、傷もなければ、血液は滞りなくスムーズに流れるので、血管にかかる圧力も高くなることはありませんが、血管が疲弊してくると狭くなっていたり、ボコボコとおうとつが出来てきたりして、益々血液の流れは悪くなります。それでも心臓は全身に血液を送り届けようと、必死で働くので血圧がさらに上がっていきます。

ホースを使って水を流す時、ホースの途中を指で摘まむと、水が勢いよく流れる様子にホースに圧力が掛かっていることが分かりますが、それと同じイメージです。

水道管も古いと汚れが着いて流れが悪くなったり、もろくなって破裂しやすくなりますが、血管もこれと同じことが言えるのです。

つまり、負のスパイラルに陥ると、血管がダメージをうけ、血管自身が身も心もぼろぼろになると「もうイヤだ!」と非行に走りだすのです。言うことを聞かなくなり、反社会勢力として動き出してしまうので、血液が隅々まで行き渡らなくなり、酸素や栄養が不足した末端には障害が出始めるようになるのです。

体の各方面に災いが及ぶので、高血圧になると様々な合併症が問題になるのはこのような仕組みから来るのです。

血圧は血管の状態を探るバロメーターの様なもので、血圧が高いということはそれだけ、「血管が傷ついちゃうよー」と警告してくれているか既に「もろくなっていますけど」と不具合を教えてくれているのです。

なぜ高血圧が首謀者と言われるのか?

脳梗塞は、血管が詰まる病気です。脳梗塞にはタイプが3種類ありますが、全てに共通するのは、高血圧によって血管がダメージを受けるのが原因の発端です。

実行犯は動脈硬化の手下

血管に高い圧力がかかり続けると、血管は傷つきもろくなってしまいますので、血管が自分の身を守るために、壁を厚く硬くして必死に高い圧力に抵抗しようとします。その結果、血管はしなやかさを失って動脈硬化となっていきます。

さらに、血管の内側を覆っている上皮細胞が損傷を受けると、傷の隙間からコレステロールが流れ出してきて塊を作り始めます。この塊りは「プラーク」と呼ばれており、このプラークこそが脳梗塞の実行犯です。

プラークは硬くなった血管の壁に少しづつ付着させて、血管内を徐々に狭くしいき、やがては血管を塞いでしまいます。また、プラークは勢力を拡大しつつこぶ状になって壁に張り付いて様子をうかがっています。が、突然その時がきたら、血栓に姿を変え猛ダッシュで犯行現場に向かっていきます。着いた先は脳の血管です。

小者は細い血管の詰まらせるに留まるので、後遺症も軽かったりしますが、大物は太い血管をドン!と詰まらせるので、死に至るケースや寝たきりの状態になったりするのです。

動脈硬化がプラークという手下を使って、多くは未遂に終わりますが、脳梗塞という殺人にまで及ぶ元凶は高血圧です。首謀者の高血圧にそそのかされて動脈硬化が犯行を犯しているのです。

共犯者は糖尿病と脂質異常症

実は脳梗塞のという犯行には、共犯者がいます。

動脈硬化だけではプラークを実行犯として育てることが難しいのですが、糖尿病や脂質異常症という共犯者の存在によって、容易に実行に移すことが可能となるのです。

糖尿病は糖質の分解が間に合わず、血液中に多くの糖が蔓延している状態です。蔓延した糖は、あっちこっちで悪さを繰り返すのですが、プラークの成長を手助けするという大変厄介な悪行をしでかします。糖尿病があると動脈硬化は強気になって勢いづいてしますのです。

プラークの生みの親ともいえるのが脂質異常症です。血管の上皮細胞膜が破れた隙間を通ってやってきた流れ者のコレステロールがプラークの元になっているからです。

高血圧により傷ついた内皮細胞の隙間から入り込んだコレステロールが酸化しプラークを生み出し、糖尿病が動脈硬化の進行を早めていくのです。

死にいたるような、太い血管を詰まらせるのは、高血圧と糖尿病、そして脂質異常症の三大危険因子で、食事の変化にともない、近年患者数が増加傾向にあります。

緩くない?あなたの監視の仕方

動脈硬化は自覚症状がないので、気付かない間に症状が進行していることが珍しくありません。また、健康診断のルーチン検査ではないので、診断が遅れることが多いです。

高血圧の人は既に動脈硬化が進行し始めている可能性が非常に高いので注意が必要です。

日常生活でできる事を継続することがカギ

高血圧も糖尿病も脂質異常症も生活習慣病と言われ、普段の生活を見直すだけで予防や改善が十分可能な病気です。

腹八分目を心掛ける、食事は減塩食や低カロリー高たんぱくを意識する、アルコールほどほどに、運動を適度におこなうなど、巷で情報があふれているので、敢えて詳細は省きますが、不規則な生活を強いられているサラリーマンで、なかなか実行に移せない人も珍しくありません。

自分だけは大丈夫!と若い頃の生活習慣でそのまま来てしまっている人も多いでしょう。

テレビやネット、雑誌などで促されると一時的には取り組んだりするのですが、気が付いたら元の習慣に戻ってしまい、毎年高血圧や糖尿病を指摘されている人もいるでしょう。

自分だけは大丈夫なんて決してありませんし、鏡を見れば一目瞭然!若い頃の自分はもうどこにもいないのです。

まずは、一つ変えることから始めませんか?

具体的で実行しやすい例を挙げてみます。

  • 顆粒だしを使わない…意外と塩分が多いので驚いています。
  • 茶碗のサイズを変える…簡単でけど費用対効果抜群
  • お家の椅子をバランスボールにする:どうやら内臓脂肪にいい仕事をするそうです。
  • アルコールを飲むときはタンパク質をしっかり摂りながら飲む…後の炭水化物を欲しがらなくなるそうです。
  • ご飯に寒天を混ぜて炊く…糖質の抑制と食物繊維の摂取が同時に行える

    大変恐縮でございますが、私や家族が実際行って意外といける!?と思った事例でした。何を伝えたいのかと申しますと、まずは、この程度から実行してみませんか?ということです。

    大事だなと思うことは、血圧や血糖値、脂質には監視の目を怠らず、常々意識しているということです。将来狙われる危険性がグッと減ります。

    強盗にあうより、通り魔に刺されるより、生活習慣病で亡くなるリスクの方が数百倍も高いのです。監視の目は決して緩めないでいただきたいです。

    母が監視の目を緩めてしまい、脳梗塞を発症してしまいました。血圧が高めだったのです。降圧剤を飲むほどじゃなかったのですが、食事には気を遣っている様子もありましたし、散歩もしていました。しかし、高齢になり細かいことが面倒になってきてでしょうか、あまり気を遣わなくなって暫らくして、脳梗塞に襲われました。

    薬は止めてはダメ!

    監視はしているが、相手を取り違えたり、やり方を間違えると、襲われてしまいます。

    既に、高血圧や糖尿病、脂質異常症で薬を飲んでるいる人に聞いていただきたいのですが、健康食品や健康グッツに頼る時期は終わってしまいました。

    健康を維持する目的として利用する健康食品は効果が期待できるものもあるようですが、医師から一度処方されて薬を飲み始めた人は、自己判断で薬を中断するのは危険と言えます。

    もし、健康食品も同時に利用したいのであれば必ず医師に確認を取られてください。薬との飲み合わせでかえって体に変調をきたすこともありますし、自己判断で薬をやめて脳梗塞になった人がいますし、止めたわけではないのですが、飲み忘れて脳出血を起こした人もいます。

    脳梗塞を予防するには、薬の服用は医師と相談しながら医師の指示を仰ぎながら自分の病気を管理していくことはとても重要なことになります。

    まとめ

    脳梗塞は死に至るとても怖い病気です。突然やってきます。

    普段から自分の体の監視を緩めると襲われてしまします。生活習慣病は当初自覚症状がないのが厄介で、自分の身に刻々と危険が近づいていることが気付かないうちに手遅れになることが珍しくありません。

    脳梗塞の予防ももちろんですが、様々な病気の引き起こす高血圧をはじめとする生活習慣病の怖さをもっと知ることは健康で長生きするためには必要になります。

    まずは出来ることから始めていきませんか