電動カート要介護

介護サービスで利用出来る福祉用具には、日常生活が少しでも快適に過ごせるよな身体の機能を補助する用具が充実しています。我が家ではこれまでベッド、手すり、スロープ、歩行器をレンタルしていました。

新たに父が電動カートをレンタルすることになって、移動手段が確保できた他に得られたメリットに、本当に利用して良かった~と思いましたので、ご紹介したいと思います。

電動カートを介護サービスでレンタルする

父は転倒時に脳挫傷になり、回復期に脚の大けがをしたのがきっかけで、歩行に支障がきたすようになりました。脚が若干不自由ではありましたが、車の運転には問題がなかったので、移動には車を日常に使っていました。

しかし、高齢になり判断力の低下にともない運転免許証を返納することにしたのです。

移動手段は私頼みになってしまい、出かける機会がすっかり減ってしまい出不精になってしまったのです。以前は歩行に不安があっても、積極的に散歩にも出掛けておりましたが、家にこもる様になり、デイサービスの利用日以外は引きこもり状態になってしまいました。

そんな折、電動カートなら少々長い距離も移動が可能なので、自分の用足しが自分の都合で行けるようになったら、出不精の解消になるのではないかと購入を検討するようになりました。しかし決して安いものではないので、購入しても結局あまり利用しなかったら勿体ないよね…なんていう思いもあり購入にはなかなか至らなかったのです。

電動カートは「車いす」扱い

ある日、福祉用具のレンタルカタログを見ていると、なんと「車いす」のページに電動カートが載っていたのです。

介護サービスで電動カートが利用できるとは全く知らずにいたので、目からうろこ状態でした。

レンタルなら、お試し気分で利用できるから、もし父に合わなくても返すことが出来るし、月の利用料も2千円ちょっとだったので、今後利用するであろう期間を考慮しても、レンタルの方が断然お得です。電動カートは中古でも20万弱ぐらいしましたから。

さらに、レンタルなら毎月点検に来てくれて掃除もしてくれます。全部レンタル料金にこみこみです。

電動カートは歩行に問題を抱える人の補助用具とういこで、車いすに分類されるのも「へぇー」と思いつつなるほどと納得したものです。

条件は要介護2以上だけど要介護1でもレンタルできる

早速ケアマネジャーさんに連絡を取り「電動カートをレンタルしたいのですが」と相談をしました。

ところが、ここで問題が発生したのです。電動カートがレンタルできるのは、原則要介護2以上の人が対象になるので「お父さんは要介護1なので主治医の意見書がないとレンタルできないのですよ!」とのお返事をいただいたのです。

なるほど、父は歩行に支障がある以外は、認知機能もまだ大丈夫だったので、要介護1だったのです。

その後、何度かケアマネさんと打ち合わせをし、リハビリの先生の意見も伺い、電動カートの使用が父の半引きこもりの状態には効果があるのではないかとの意見が一致し、そして、いよいよ担当の医師に相談にいくことになりました。

主治医は長年父を診てくださっており、父の信頼も厚く、私たち家族の意向を組んだ治療をしてくださる、本当に頼りにしている先生です。

先生に事情を説明すると、十分納得してくださり「意見書を書きましょう」と仰ってくださいました。そして、無事電動カートをレンタルすることが出来たのです。

電動カートのメリットは移動手段だけではなかった

念願の電動カートが我が家に来ました。

最初淡々と業者の説明を聞いていた父ですが、実際試乗して安全に運転が出来ると判断されたら、父から質問が出始めたのです。

運転免許証を返納していた父の生活が一変

運転免許証を返納する数か月前から、車をこするとか、路肩にぶつけるとか、側溝にはまるとか、ちょっとしたハンドルミスをするようになり、更新を機に返納することになったのです。

移動はほぼ車だった父は、自分の足がなくなったのを機に、近所へのお出かけもなくなり、買い物もしなくなり、めっきり自ら家を出る事がなくなって、毎日「まいったなー」とため息を付くような状態にいたのですが、電動カートが来てから、以前の父に一気に戻って行ったのです。

毎日、晩酌を楽しみにしている父の最初のお出かけは、大好きなお酒を買いに行くことでした。その後も、ちょこちょこ買い物に行くようになり、酒の肴を買ったり、知人のところに様子伺いに言ったり、すっかり顔色まで良くなってしまったです。

梅干を漬けるほど前向きになる

元々良く動く人でしたので、多少歩行に支障が出てからも家庭菜園や屋敷周りの片付けなど、動ける範囲でやっていましたが、免許証を返納してからは、家庭菜園もやめてしまっていたのです。が、なんと、何年かぶりに梅を漬けると言い出したのです。もちろん必要な材料も自分で買いに行きました。

梅漬けは意外と重労働なので、自宅の梅の木の梅が数年放って置かれたままだったのです。これには大変驚きました。

それ以外にも変化があります。歯磨きもやったりやらなかったりでしたが、毎日欠かさずやる様になりました。

私の声かけにも文句で返すことが多かったのですが、対応にも変化が見え、穏やかになったようです。活動量が増えて夜もよく眠れるみたいで、積極的な父が戻ってまいりました。

まとめ

歩行に不安を抱えながらも、車で思うがままどこへでも出掛けていた父にとって、免許証がなくなり運転が出来なくなったことが、父の人間性も変えるような一大事であったことを、私は父の気持ちになってくみ取ることが出来ていなかったようです。

70年以上も運転してきた車を取り上げられて、大げさかもしれませんが、人間として終わった!ぐらいの気持ちでいたのかもしれません。

電動カートの導入は、移動手段の確保だけではなく、父が父として取り戻すきっかけをも、もたらしてくれたのです。

介護される人の気持ちを理解するのは難しいかもしれませんが、本人らしさが取り戻せたら介護も大きく違ってくる一例を経験しました。

そして改めて感じたのは、ケアマネジャーさんやPTさん、主治医の先生との連携の必要性です。日頃から信頼関係を築くと同時に良好な介護生活を送るためには積極性を持って関係者や機関と関わっていく姿勢が大切だと実感いたしました。

介護サービスをもっと知って、介護生活が少しでも楽に過ごせることを願ってます。